グレン・マーティンスがMaison Margiela(メゾン マルジェラ)で初めてのプレタポルテを発表してから、1年がたちました。この間、中古市場では静かな世代交代が起きています。私たちMODESCAPEの販売データでは、「Maison Martin Margiela」表記の、2014年以前のアイテムが販売に占める割合は3年前の約8割から約2割台まで下がり、いまはジョン・ガリアーノの時代の服が主役です。創業者マルタン・マルジェラの時代の服は、市場に出てくること自体が少なくなっています。
この記事では、マルジェラを「マルタン期」「ガリアーノ期」「グレン期」の3つの時代に分けて、それぞれが中古市場でどう評価されているのかを、MODESCAPEの販売データとバイヤーの実感を交えてお伝えします。
グレン・マーティンス就任から1年、マルジェラで何が起きたか
まずは、この1年の歩みを振り返ります。グレン・マーティンスの経歴そのものは、以前の記事「グレン・マーティンスのキャリアとメゾン マルジェラ」で詳しく紹介していますので、ここでは就任後の動きに絞ります。
ジョン・ガリアーノの退任が2024年12月に発表され、翌2025年1月、親会社のOTBはグレン・マーティンスをクリエイティブ・ディレクターに任命しました。DIESEL(ディーゼル)のクリエイティブ・ディレクターと兼任しています。最初の発表は2025年7月、パリのオートクチュール週間でのアーティザナル(手仕事のライン)でした。
プレタポルテのデビューは、2025年10月にパリで発表した2026年春夏コレクションです。子どもたちのオーケストラがあえて調子外れの演奏をする演出は、マルタン・マルジェラが1989年・1990年のショーで子どもたちを起用したことへの目配せとして受け止められました。2026年4月には、ブランドとして初めて上海でショーを開き、2026年9月の2027年春夏コレクションでは、テーラリング(硬さ)とドレープ(柔らかさ)の対比をテーマに据えています。海外の批評を読むと、評価は「マルジェラの文法を尊重しながら、着やすさに寄せてきた」というものが多い印象です。
マルタン期・ガリアーノ期・グレン期 ― 3つの時代を整理する
中古のマルジェラを見るときは、どの時代に作られたものかを最初に確かめます。この節では、査定の前提になる時代の区切りと、それぞれの特徴を整理します。

マルタン期(1988〜2009年)
マルタン・マルジェラがジェニー・メイレンスとともに1988年に立ち上げ、同年秋に最初のコレクションを発表しました。このデビューで登場したのが、今も続く足袋ブーツ「Tabi(タビ)」です。古着を解体して作り直す手法、裏地や縫い代をあえて見せる仕立て、ペンキで塗り固めたデニムなど、「服とは何か」を問い直す試みが次々と生まれました。デザイナー本人は顔を出さず、四隅を白い糸で留めただけのラベルも、匿名性を象徴するものとして知られています。2002年にディーゼル創業者のレンツォ・ロッソの傘下に入り、マルタンは2009年にブランドを離れました。
ガリアーノ期(2014〜2024年)
デザインチームによる数年間を経て、2014年にジョン・ガリアーノが就任します。翌2015年にはブランド名から「Martin」が外れ、「Maison Margiela」になりました。ガリアーノはアーティザナルを軸にメゾンを再び熱狂の中心に戻し、バッグの「5AC」や「グラムスラム」など、新しい定番も生み出しました。2024年1月のアーティザナルのショーは、近年のファッション史に残る名演として語り継がれています。
グレン期(2025年〜)
まだ1年ですが、ショーで見せた素材の加工や、アーカイブの要素を日常着に落とし込んだ服は、早くも店頭で手に取られています。中古市場に出てくる数はまだごくわずかです。
中古市場で起きていること ― MODESCAPEの販売データから
ここからは、私たちが実際に販売したマルジェラ(MM6を除く)の記録をもとに、時代ごとの動きを見ていきます。期間は2023年10月から2026年9月までの3年間で、1年ずつ区切って比べました。
マルタン期の服が減っています。「Maison Martin Margiela」表記の、2014年以前のアイテムが販売に占める割合は、1年目が約80%、2年目が約57%、直近1年は約26%でした。販売点数そのものも227点から81点に減っています。
なかでも初期のものは、ほとんど見かけなくなりました。商品名に「白タグ」「初期」「90年代」などを記した古い年代のアイテムは、1年目と2年目に52点ずつ販売しましたが、直近1年は16点でした。
主役はガリアーノ期へ。直近1年に販売したマルジェラのうち、シーズンの表記から2015〜2024年の製造とわかるものが182点で、全体の約6割を占めました。平均の販売価格は約3万1千円です。
足袋は勢いが続いています。足袋ブーツやタビシューズなどの販売は、11点、14点、27点と、3年で2倍以上に増えました。
グレン期のアイテムもすでに動き始めました。2025年以降のシーズン表記がある商品は、直近1年でまだ7点ですが、平均の販売価格は約5万円と高めです。
マルタン期の服が減っているのは、人気が落ちたからではありません。私たちの実感では、むしろ逆です。良い状態の初期のものは、手放す方が少なくなり、市場に出てきた瞬間に売れていきます。買取の現場でも「最近はマルタン期のものをほとんど見かけない」という声がよく上がります。
時代ごとに見る、評価されるアイテム
では、それぞれの時代で、どのようなアイテムが評価されやすいのでしょうか。この節では、バイヤーの目線で具体的なアイテムを挙げます。
マルタン期: 白タグの初期コレクション、ペンキ加工のデニムやジャケット、古着を作り直したアーティザナル(ライン0)、ドイツ軍のトレーナーを写したスニーカーなどの「Replica(レプリカ)」の初期のもの。数が少ないため、多少の使用感があっても評価が大きく下がりにくいのが特徴です。
ガリアーノ期: 5ACやグラムスラムなどのバッグ、足袋のブーツやバレエシューズ、アーティザナルの要素を取り入れたコートやジャケット。年式が新しいぶん、状態の良さと付属品の有無が評価を分けます。
グレン期: ショーのルックに登場した服や、素材の加工に特徴のあるもの。新しいコレクションほど、発売から日が浅いうちにお持ちいただくと評価しやすくなります。
査定で私たちが見るポイント
マルジェラは、一般的なブランドとは少し違う見方が必要です。この節では、私たちが査定で必ず確かめる点をまとめます。

ラベルの数字。白いラベルに0から23までの数字が並び、丸で囲まれた数字がラインを表します。たとえば「0」はアーティザナル、「1」はウィメンズ、「10」はメンズ、「11」はアクセサリー、「22」は靴です。ラインによって評価は大きく変わります。
シーズンと時代。品番やシーズンの表記、ラベルの表記(Martinの有無)から、どの時代のものかを確かめます。
意図された加工と、ダメージの見分け。ペンキ加工や切りっぱなしの裾は、もともとの表現です。一方で、足袋の底の減りや、パテントレザーのひび割れ、白い糸の欠けは評価に影響します。
付属品。靴の箱や保存袋、替えのパーツ、ショップカードがあれば一緒にお送りください。
ご自身で判断がつかない場合も、ラベルの写真をお送りいただければ、時代やラインを確認してご案内します。偽物の見分け方については、以前の記事「絶対に買ってはいけない!マルジェラの偽物」も参考にしてください。
よくあるご質問
マルジェラの買取について、お客様からよくいただく質問にお答えします。
マルタン期とガリアーノ期、どちらが高く売れますか?
一概には言えませんが、状態の良い初期のマルタン期のアイテムは、数が少ないぶん評価が高くなりやすい傾向があります。ガリアーノ期でも、人気のバッグや足袋、アーティザナルの要素がある服は十分に評価されます。
ラベルが切られていても買い取ってもらえますか?
お買い取りは可能ですが、ラインや時代を確かめる手がかりが減るため、評価は下がることがあります。四隅の白い糸の跡が残っていれば、それも判断材料になります。
MM6も買い取ってもらえますか?
はい、お買い取りしています。MM6とメインラインの違いは、以前の記事「MM6ってMaison Margielaと何が違うの?」で紹介しています。
グレン期の新しいアイテムは、今売るべきですか?
新しいコレクションは、定価に近い時期ほど評価しやすくなります。着る予定が少ないのであれば、早めの査定をおすすめします。
まとめ
グレン・マーティンスの1年で、マルジェラは新しい時代に入りました。中古市場では、マルタン期の服が少なくなり、ガリアーノ期が主役となり、グレン期の服が加わり始めています。どの時代の服も、それぞれ違う理由で評価されるのがマルジェラの面白いところです。
もしクローゼットに、ラベルの数字に丸が付いた一着が眠っているなら、それは今、次の持ち主が探している服かもしれません。私たちMODESCAPEは、マルジェラの時代やラインの違いを踏まえて、一点ずつ丁寧に査定します。
メゾン マルジェラのお買い取りについて
MODESCAPEでは、メゾン マルジェラの服・靴・バッグのお買い取りを強化しています。マルタン期のアーカイブからガリアーノ期の定番、MM6まで、アイテムの背景を理解した査定をいたします。宅配買取・店頭買取・LINE査定から、お気軽にご相談ください。


















