
アン・ドゥムルメステールの詩的パンクと再評価
ロゴで語るファッションや、めまぐるしく移り変わるトレンドの消費に一線を引き、「本当に良い服とは何か」を見つめ直す動きが広がっています。布の裁断と身体の関係性、そして着る人の内面を映し出すような服づくり。その中心に位置するのが、アントワープ・シックスの至宝、Ann Demeulemeester(アン・ドゥムルメステール)です。
ブランドの基本的な歴史やデザインの特徴についてはこちらのコラム記事で詳しく解説しています。
本記事では、近年の体制変更がアーカイブ市場にどのような影響を与えているのか、そして「本人期」のアイテムがなぜかつてないほどの価値を放っているのかに焦点を当てて紐解いていきます。
2013年以降の激動 ── 体制変更がアーカイブ価値を押し上げた
Ann Demeulemeesterのアーカイブがこれほどまでに高騰している背景には、2013年以降のブランドの体制変化が深く関わっています。ここでは、その経緯と市場への影響を時系列で整理します。
アン退任からAntonioli買収へ
2013年、創業者であるアン・ドゥムルメステール本人がブランドを退任。その後、後任のセバスティアン・ムニエのもとでコレクションが続けられましたが、2020年にクラウディオ・アントニオーリ氏率いるAntonioli Groupがブランドを買収し、新たな章が始まります。
クリエイティブ・ディレクターの交代劇
出典 businessoffashion.com
新体制下で最初にクリエイティブ・ディレクターに就任したのはルドヴィック・ド・サン・セルナンでしたが、オーナーとのビジョンの相違からわずか1シーズンで退任。2023年、ブランド内部のメンズウェアチームから昇格したステファノ・ガリッチが後任に就きました。
ガリッチ氏のコレクションが注目を集めている理由は、過去のアーカイブへの深い理解に根差している点にあります。ブランドのDNAであるモノトーンの詩学、非対称のカッティング、身体と布の間に生まれる「空気の層」を、現代的な文脈で再解釈するそのアプローチは、コレクターやメディアから高い評価を得ています。なお、創業者であるアン本人はブランドを離れた後もガリッチ氏と毎週連絡を取り合い、非公式ながら忌憚のない助言者としてブランドに寄り添い続けていると言われています。
体制変更が生んだ「アーカイブ再評価」
こうした激動のなかで起きたのが、アーカイブ市場の急速な活性化です。ガリッチ氏のコレクションが過去のアーカイブとの親和性が極めて高いため、「本人期」のヴィンテージピースと現行コレクションを新旧ミックスして着用するスタイルが定着。これにより、過去のピースがクローゼットの奥から引き出され、中古市場での流通量と需要が同時に高まるという好循環が生まれています。ブランドの「黒と白」「パンク精神」「テーラリング」といった根幹が、現代の若年層やアーカイブ・コレクターたちの間で「現代のクラシック」として認識され始めたことも、この流れを後押ししています。
「本人期」のアーカイブ ── 何が、なぜ高騰しているのか
リセール市場において、Ann Demeulemeesterは「経年変化が価値を損なわない」という稀有な特性を持っています。ここでは、特に評価の高いアイテムと、その背景を具体的に解説します。
高騰するアイテムの傾向
1985年から2013年までアン本人がデザイナーを務めていた時代のアイテムは「本人期」と呼ばれ、中古市場で最も高い評価を受けるカテゴリです。なかでも特に争奪戦となっているのは、以下のようなアイテムです。
90年代後半〜2000年代前半のテーラードジャケットやコルセット要素を取り入れたアイテムは、アンの哲学が最も色濃く反映された時期のプロダクトとして高い需要があります。
また、レースアップブーツの初期モデル、特に「Vitello(ヴィテッロ)」と呼ばれる上質なカーフレザーを用いた個体は、使い込むほどに深い艶を増す経年変化が評価され、状態の良いものが市場に出るたびに即座に売約となるケースも珍しくありません。
素材が語る「本人期」の価値
アン・ドゥムルメステールのアーカイブを正しく評価するうえで、素材への理解は欠かせません。ブランドを象徴するウールとリネンの混紡素材は、リネンの持つ独特のハリ感とシワの残り方、ウールの落ち感とドレープが絶妙に共存しています。このリネン特有のネップ(繊維の節)やシワは、一般的な査定では「ダメージ」と誤認されることがありますが、アン・ドゥムルメステールにおいてはブランドの美学そのものであり、むしろ経年による風合いの深まりとして評価されるべきものです。
MODESCAPEだからできる「文脈の査定」
Ann Demeulemeesterのアイテムは、その独特な美学ゆえに、一般的な査定基準では正しく評価されにくい側面があります。ここでは、私たちMODESCAPEの査定における考え方をご紹介します。
一般的な査定では見落とされがちな「長いリボンの意図」や「切りっぱなしのラフな仕様」を、私たちのバイヤーはブランドの哲学の一部として正確に評価します。前述のとおり、リネン素材のネップやシワをダメージではなく「風合い」として加点すること。どのシーズンの、どのルックが今最も求められているかをリアルタイムで把握すること。そしてAnn Demeulemeester特有のパターンや縫製の細部まで確認する専門性。これらが、私たちが約束する真の価値評価です。
「本人期」のアイテムはもちろん、ガリッチ体制下の現行コレクションも市場での回転率が極めて高く、買取対象として積極的に評価しています。
まとめ:Ann Demeulemeesterを纏う、という意思
アン・ドゥムルメステールの服を選ぶということは、一時的な流行に身を投じることではなく、自らのアイデンティティを確立する行為です。ガリッチ体制のもとでブランドが新たな輝きを放つ今こそ、「本人期」のアーカイブが持つ歴史的な重みと美学は、かつてないほど鮮明に浮かび上がっています。新旧のピースが互いの価値を高め合うこの関係性は、アン・ドゥムルメステールというブランドならではの稀有な特質です。
お客様が大切にされてきた「アン」の一着一着には、その時の記憶や想いが宿っているはずです。私たちMODESCAPEは、その価値を単なる「中古品」としてではなく、次世代へと受け継ぐべき「アーカイブ」として、最大限の敬意を持って査定いたします。
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MODESCAPEでは、Ann Demeulemeesterの買取を強化しています。 希少な本人期のテーラードジャケットや初期のレースアップブーツから、ステファノ・ガリッチ体制下の現行品まで幅広く網羅 。リネン特有のシワや切りっぱなしの仕様といったブランドの美学をダメージではなく風合いとして正しく査定いたします 。お買い取りをご検討の際は、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
MODESCAPE
ブランド服専門の買取店モードスケープです。トレンドから過去の名作まで、ワクワクするブランドアイテムを販売・買取しています。ファッションに関する様々な記事・コラムを配信しています。


