TPOに合わせた基本的なスーツ選びのポイント
ビジネスマンならほぼ毎日着るスーツ。私自身年間を通しても2・3回程度で、先日着る機会がありましたがどうもしっくりこないまま一日が過ぎてしまいました。そこで今回の記事は、スーツの知識を深める内容となります。
まずは、基本的なジャケットおよびスラックスの各名称と与える印象について解説していきます。そして冠婚葬祭などTPOに合わせたスーツ選びのポイントを紹介いたします。少しでもご参考にしていただければ幸いです。是非最後までご覧ください。
スーツの起源
スーツの歴史は19世紀初頭のイギリスに遡ります。ビクトリア朝時代にはフォーマルな場で「フロックコート」が主流でした。フロックコートは丈が長く、ウエスト部分が絞られたデザインで、格式の高い装いとされていました。
1850年代になると、より実用的な「ラウンジスーツ」が登場します。ラウンジスーツは現在のスーツの原型とされ、フロックコートに比べ丈が短く、動きやすさを重視したデザインでした。このスタイルは次第に広まり、20世紀にはシングル・ダブルの2種類のスーツが定着。現代のビジネススーツへと発展していきました。
ジャケットの各名称
ジャケットは細かなディテールによって印象や着心地が大きく変わります。襟やポケット、ボタンの配置など、それぞれに特徴があり、選び方次第でスタイルが決まります。
ゴージライン
ゴージラインとは上襟と下襟の縫い目のことを指します。
ゴージラインの種類 | 特徴や印象 |
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ナローラペル | 下襟の幅が5〜7cmほどのラペル。ナローは「細い」という意味をもち、スリムなスーツやモードスタイルのスーツに多く採用されています。スタイリッシュな印象があり、都会的な雰囲気を演出。 |
ワイドラペル | 文字通り、幅の広いラペルが特徴。9〜10cmほどのラペルはクラシカルなスーツに採用されることが多く、信頼や威厳といったことを重視する仕事や役職にふさわしいディティールです。 |
スーツの襟
ラペルの種類 | 特徴や印象 |
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ピークドラペル | スーツの下襟が上方向に向いたラペルのことを指します。「剣襟」とも呼ばれ、華やかさや堂々とした印象を与えるディテール。そのため、タキシード・正装にも採用されています。 |
ノッチドラペル | ゴージラインが直線的なラペルで、最も一般的なデザイン。多くのビジネススーツに採用されており、すっきりとした印象を与えます。シンプルでシャープな雰囲気が特徴で、幅広いシーンに対応可能。 |
フィッシュマウスラペル | 上襟と下襟の繋ぎ目がフィッシュマウス(魚の口)に、似ていることから名付けられたラペル。90度の角度が基本で、元々はチェック柄を崩さないために作られたそう。ビジネス・カジュアルシーンともにフィットするディティール。 |
ショールラペル | ゴージラインがなく、滑らかな曲線を描くラペル。上品な印象があり、リラックス感やラグジュアリーさを感じさせる、タキシードにも採用されるデザインです。 |
ボタンスタンスの種類 特徴や印象・Vゾーンについて
ボタンスタンスの種類 | 特徴や印象・Vゾーンについて |
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シングルボタンスタンス | もっともフォーマルなスタイルに適したボタン数とされているため、タキシードやモーニングコートなどにも採用されています。Vゾーンが広いため、ドレッシーかつ華やかな印象を演出します。 |
ツーボタンスタンス | カジュアルはもちろん、ビジネスシーンでも一般的なスタンス。正しい留め方は「上ボタンのみ」。下ボタンは止める必要がなく、装飾として考えておきましょう。 |
スリーボタンスタンス | 誠実な印象を与え、クラシカルなスーツにあしらわれることが多く、フォーマルなシーンでも活躍してくれます。通常は上と真ん中のボタンを留めますが「段返りスーツ」の場合は、真ん中のボタンのみを留めるのが一般的。 |
胸・腰ポケット
胸ポケット
胸ポケットの種類 | 特徴や印象 |
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バルカポケット | 舟の先のように、三角形の形をしたポケット。その見た目から舟型ポケットと呼ばれることもあります。 エレガントな印象があり、胸元に沿うような、立体的で綺麗なシルエットに仕上がります。 |
ウェルトポケット | ビジネススーツのみでなく、礼服にも用いられます。へり飾りのある布を付けたポケットで「箱ポケット」としても知られています。 |
腰ポケット
腰ポケットの種類 | 特徴や印象 |
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玉縁ポケット | ポケットの端をバイアステープや本体の布で包むように仕立てられたポケット。上下両方に施された「両玉」と、片側だけの「片玉」に分かれます。腰回りのシルエットをすっきりとさせたい方におすすめ。 |
フラップポケット | フタがついており、ビジネススーツによく見られるディティール。ホコリや雨がポケット内に入り込むのを防ぐ役割として使用されてきました。そのため、フラップは屋外では出し、室内では出さないのが基本。 |
ジェットポケット | 別名は胸ポケットと同じく「ウェルトポケット」とも呼ばれ、へり飾りのあるポケットです。スタイリッシュな印象があり、ベストに関してはジェットポケットが基本的に採用されます。 |
パッチポケット | 布をパッチのように縫い付けたデザインのポケット。元々はワークウェアに用いられていた経緯があり、カジュアルな印象があります。ジャケパンスタイルやオフィスカジュアルな装いにフィットするディテール。 |
ベント
ベントとはジャケットの後ろ身頃の、裾部分に入っている切れ込みのことを指します。
ベントの種類 | 特徴や印象 |
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センターベント | ベントは1本で、動きやすさはありつつも裾の広がりを最小限に抑えてくれるディティール。スポーティーさや、スタイリッシュな印象を与えます。 |
サイドベンツ | 両脇部分にベントが施されているため、ジャケットの裾が自然と開き、ゆとりのあるシルエットに。エレガントさや、堂々とした印象を与えます。 |
ノーベント | 礼服やタキシードなど、フォーマルな装いに多く採用されます。そのため、クラシカルでエレガントな印象に。 |
袖ボタン
袖ボタンの種類 | 特徴や印象 |
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本切羽 | ジャケットの袖口を実際に開閉できる仕様で、単なる飾りではないのが特徴。既製品ではあまりみられず、オーダーメイドや高級スーツに多く採用されるディテール。 |
開き見せ | ボタンやホールが飾りとして装飾されており、実際に開閉することはできません。メリットとして、袖丈の調整が簡単にできる点が挙げられます。 |
キッスボタン | ボタンが重なるように装飾されており「重ねボタン」とも呼ばれています。立体感があり、腕周りを華やかに飾ります。 |
ライニング
ライニングの種類 | 特徴や印象 |
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総裏地 | ジャケットの内側全体に裏地が付いた仕様。寒さを防ぐ役割はもちろん、表地を補強する役割もあり、ジャケットの型崩れを防いでくれます。 |
背抜き | 背中から裾にかけて裏地がない仕様で、総裏地に比べて軽量。通気性が良く、特に夏用のジャケットに多く採用されています。 |
ノーライニング | 文字通り、裏地がない仕様で「アンコンジャケット(unconstructed jacket)」によくみられます。 背抜きと同じく、軽量で通気性が良く、清涼感があるのが特徴。 |
お台場仕立て | ジャケットの内ポケットのまわりを、生地で縁取る仕立てのことを指します。使用頻度の高い内ポケットの型崩れや、芯地のずれを防ぐ役割があり、主に高級スーツにあしらわれているディテール。 |
大見返し | 裏地を最小限に抑えた仕立てで、軽やかで快適な着心地が特徴。窮屈感がなく動きやすいため、リラックスした着こなしが可能です。軽量な生地が上品になびき、エレガントな印象を演出。 |
スラックスの各名称

タックやセンタープレス・裾の仕様など、スラックスは細部のデザインによって印象が大きく変わります。シルエットや履き心地にも影響するため、重要なポイントといえるでしょう。ここでは、スラックスの各名称を解説します。
センタープレス
スラックスの中央に入った折り目のこと。スーツには欠かせないディテールで、脚のラインをまっすぐに見せる効果があります。清潔感があり、上品で洗練された印象を与えるのも特徴です。
タック
タックとは、スラックスのウエスト部分に施された「ひだ」のこと。
タックの種類 | 特徴や印象 |
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ノータック | タックが全くないデザインで、腰回りにフィット感を生み出します。タックによるシワがない分、すっきりとした印象でスタイリッシュさがあります。 |
ワンタック | ウエストに左右1つずつタックが施されたデザイン。タックがセンタープレスに向かって一直線に伸びるため脚長効果が期待できるディティール。 |
ツータック | タックが2ヶ所入っているため、腰回りにゆとりが生まれます。シルエットはワイドで、重厚感のある雰囲気に。こなれ感やエレガントなムードを醸し出します。 |
裾口
裾口の種類 | 特徴や印象 |
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シングル | 裾の折り返しがない仕様で、足元にすっきりとした印象を与えます。フォーマルなスーツに合わせる場合はシングルがベター。また、日本のスーツスタイルの主流といわれています。 |
ダブル | 裾を折り返している仕様。クラシカルでエレガントな印象がある一方で、ロールアップのイメージから、ややカジュアルな印象を持ち合わせています。 |
モーニングカット | 裾を後ろ斜め下方向にカットしたデザイン。元々、モーニングコートのスラックスに採用されていたことから、この名称が付きました。前裾は後裾と比べると1.5cmほど短くされており、美しいシルエットを作り出します。 |
前開き部分
前開きの種類 | 特徴や印象 |
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ジッパーフライ | スラックスの前立て部分をファスナーで開閉できるデザイン。素早く着脱でき、実用性に優れるため、多くのスラックスに採用されてます。 |
ボタンフライ | ボタンで留めるクラシックな仕様。ジッパーフライが登場する以前は主流なデザインとされていました。レトロな雰囲気があり、トラディショナルなスタイルを演出。 |
ポケット
ポケットのデザイン | 特徴や印象 |
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斜めポケット | ポケットの入り口が斜めになっているデザイン。実用性が考えられたディティールで、物の出し入れがしやすい利便性があります。 |
ストレートポケット | フォーマルなスラックスによくみられ、真っ直ぐなデザインが特徴。斜めポケットに比べ、シルエットに影響せず、立ち姿を美しくみせてくれる効果があります。 |
カフガード
「靴ずれ」とも呼ばれる、裾の内側後ろ部分に付けられた長方形の布。靴とスラックスが擦れることで生じるダメージを防ぎ、裾の傷みを軽減する役割があります。
冠婚葬祭には

冠婚葬祭の場では、TPOにふさわしいスーツを選ぶことが大切です。色やデザイン・素材の違いによって与える印象が変わり、マナーにも関わります。ここでは、冠婚葬祭のスーツスタイルについて解説します。
スーツのスタイル
スーツスタイルの種類 | 特徴や印象 |
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シングルブレスト | ジャケットのフロントボタンが、一列に並んで仕立てられているスーツを指します。 着用シーンに制限のない、オールマイティーなスタイル。 |
ダブルブレスト | 平行に並んだ2つのボタンが特徴。シングルブレストと比較すると個性的な印象があります。エレガントな雰囲気があり、フォーマルな場にも適したデザイン。 |
タキシード | 礼服の1つに数えられるフォーマルウェア。主に、夜の準礼服として着用されます。ショールカラーやピークドラペルが採用され、光沢感の素材に切り替えられていることが特徴。 |
モーニングスーツ | 昼の正式な礼装で、格式の高いフォーマルウェア。最大の特徴は、前が短く後ろが長いジャケットのデザイン。結婚式の新郎新婦の父親や公式行事の要人が着用することが多く、昼のフォーマルシーンにふさわしい装いとされています。 |
素材の選び方
素材 | 特徴や印象 |
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ウール | 一般的なスーツ生地に使用されており、保温性と吸湿性に優れています。ウールは冬の素材という印象がありますが、織り方によっては夏用スーツにも適しており、快適な着心地を実現します。 |
リネン | さらっとした手触りが特徴で、春夏用スーツの定番素材。吸水性が高く汗や湿気に強いだけでなく、熱を逃しやすいため、ひんやりとした涼しさを感じられます。 |
コットン | 主に春夏用のスーツに使われており、耐久性と吸水性に優れる素材。ややカジュアルな印象があるため、リラックス感やオフスタイルに適しているといえます。 |
ポリエステル | 丈夫でシワになりにくく、仕事用のスーツとして重宝される素材。ポリエステル製のスーツは比較的安価ながら、独特の光沢があり、高級感のある仕上がりになるのが特徴。 |
成人式・入学式・卒業式
祝賀の場ではフォーマルなブラックスーツのほか、ネイビーやグレーなど明るめの色も一般的です。華やかで清潔感のある印象を与えるため、派手すぎないダークカラーのスーツが好まれるでしょう。
ジャケットはシングルブレストの2つボタンが基本で、フォーマルかつ上品な印象を演出できます。ネクタイやポケットチーフで個性を出すこともできますが、奇抜すぎるデザインや過度な光沢感のある素材は避けるのが無難です。
また、カジュアルすぎるジャケットや、派手な柄のスーツはNGとされています。素材はウールやポリエステルが一般的で、季節に合わせて選ぶと快適です。
靴は黒の革靴が基本で、スニーカーやサンダルは避けましょう。
結婚式
結婚式ではブラック・ネイビー・ダークグレーなどの落ち着いた色が一般的。夜の結婚式ではブラックスーツが適しており、昼間の式ではやや明るめの色も着用することができます。
ジャケットはシングルブレストの2つボタンが無難で、華やかさを演出するためにシルク混の素材を選ぶのもおすすめ。ネクタイはシルバーやホワイト系がフォーマルな印象を与え、ポケットチーフやカフスボタンで上品にまとめると好印象な雰囲気に。
ブラックスーツでも、ビジネス用のものはNGとされるため、格式のあるスーツを選ぶことが重要です。また、白いスーツは新郎と被るためNG。
靴は黒の革靴が基本とされ、ローファーやカジュアルなデザインのものは控えるのがマナーです。
葬儀
葬儀ではブラックスーツが基本です。ネイビーやグレーなどの色は避け、シンプルで落ち着いたデザインを選美ましょう。素材はウールが一般的で、光沢のある生地や柄の入ったものは避けるのがマナーです。シャツは白無地で、ネクタイは光沢のないブラックを選ぶことが基本とされています。ポケットチーフやカフスボタンは不要で、靴やベルトも黒で統一するのが望ましいといえます。
サイドベンツのジャケットやローファーなど、カジュアルな印象のあるアイテムはNG。また、腕時計もシンプルなデザインのものを選び、派手な装飾品やアクセサリーは控えましょう。
お祝い事
お祝い事ではネイビー・グレー・ブラウンなどの明るい色のスーツが好まれます。ブラックスーツはフォーマルすぎるため、避けるのが一般的。ジャケットはシングルブレストの2つボタンが無難で、カジュアルなシーンではノーネクタイでもマナー違反にはなりません。
素材はウールやコットンなど、季節に合わせたものを選ぶと快適でしょう。ネクタイやポケットチーフはカラフルなものを選ぶと、より華やかさが増します。
派手すぎなければ、チェック柄やストライプなどのデザインも許容されますが、あまりにもラフすぎるスタイルは控えるのが無難。
靴は黒やブラウンの革靴が適しており、スニーカーやサンダルは避けましょう。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます。スーツの着こなしには、TPOに合わせた選び方が重要です。ジャケットやスラックスのディテール、素材の違いを理解することで、より洗練された印象を与えることができます。特に冠婚葬祭などのフォーマルな場では、適切なスーツ選びがマナーにもつながります。今回の内容を参考に、シーンに合ったスーツを選び、品よくスマートに着こなしましょう。
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この記事を書いた人

小川剛司 (MODESCAPE 編集部)
ライター・ファッションモデル。学生時代のアルバイトからファッションの世界へ。大手セレクトショップの販売員、ECスタッフを経て、長年携わったアパレルの経験と知識を活かしWEBライターに。数々のファッションマガジンサイトで執筆を行い、メンズ・レディース問わずおしゃれを発信しています。現在は韓国を拠点にモデル活動しており、更なるファッション知識を探求中! Instagram:@t_t_k_k_s_s