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更新日:2020年5月16日 公開日:2017年1月9日

復権したヒップホップとファッショントレンドの関係性

今、音楽界の注目は再ブレイクを果たしたHip-hopですが、ファッション面でも影響は大きい様子。街中では’90sヒップホップを感じるオールドスクールなコーデから、最新モードを取り込んだラグジュアリーなヒップホップスタイルなど、90年代の第一次ブームを彷彿させる盛り上がり。当時から現在までの流れを考察してみます。

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音楽とともに歩むファッション

音楽やそれに付随するカルチャーがファッションに与える影響は昔から大きく、
’60年代には、The Beatles(ビートルズ)がモッズやヒッピーなど様々なスタイルに移り変わる度に、世界中で若者が集まる街の景色が変わったものだと聞きます。

ちょっと古すぎる話かもしれませんが、その流れは現在も変わりなく、
昨年2016年において最もファッションシーンに影響を与えた音楽ジャンルと言えば、

“HipHop”といって間違いないでしょう。

日本のテレビでは、フリースタイルダンジョンというラップバトル番組が放送開始し、邦楽ヒップホップアーティストが音楽チャート上位入りを果たすなど、
音楽としてのヒップホップ自体がリバイバルブームの様子。

メジャーシーンで’90年代後半にスチャダラパー、’00年代初頭にDragon AshやRIP SLYMEなど気軽にラップに触れられるグループが活躍し、
アンダーグラウンドとされるアーティストですら上位にチャートインしていた時代を彷彿とさせる盛り上がり方は、10年前には想像がつきませんでした。

出典:https://www.youtube.com

 

今現在、日本においてファッションの拠点と呼ばれるような街では、

90年代のスナップかと見紛う当時のヒップホップ好きが好んだような、コーチジャケットにL’evis(リーバイス)といったコーデを楽しむ少年たちが表参道を闊歩し、

無題

出典:http://www.web-across.com/observe/srnrj2000002y8tl.html

また、世界や日本を席巻するヒップホップアーティストが実践する、ラグジュアリー且つ不良っぽさの漂う、それでいながらどこか都会的な雰囲気の、
ラグジュアリーストリートファッションに身を包むファッショニスタ達が渋谷や六本木などの盛り場に集結しています。

ragusuto

出典:https://www.instagram.com/nubian_tokyo/?hl=ja

このように今日、ヒップホップファッションは現代のシーンを語る上で欠かせないジャンルと言えます。

それでは、
”再ブーム”となっているこのジャンル、いままでどのような経緯で今日に至り、
また、なぜ現代のマーケットでここまで支持されているのでしょうか。

ヒップホップ成立の背景や歴史、それらを彩ってきたファッションに加え、今人気になっている理由を考察していきます。

 

ヒップホップの誕生

ヒップホップが生まれた背景

音楽としてのヒップホップは、1980年前後にニューヨークのスラムのようなところで生まれました。

貧困層の黒人達によるブロック・パーティー(街区の住人によるパーティー、日本で言えば自治会のお祭りみたいなものですかね)で演奏された、
サンプリングや打ち込みを多用したバックトラックにラップを乗せ、リズム感を強調した音楽形態、というのが一般的な説明となります。

ちなみにサンプリングには、それまで黒人音楽の代表格だった、ジャズやソウル、ファンクのフレーズなどが主に用いられていました。

ヒップホップのこれ以上の音楽的な解説は専門家に任せますが、サンプリングだとかの概念は音楽に留まらない部分もあるので覚えておきたいところ。

ブロック・パーティーでは、お祭りには付きものの縄張り争いや喧嘩、これらを実際にやって仲間同士で血を流し合うことはせず、
代わりにラップバトルやブレイクダンスバトル、DJプレイなどが行われていたようです。

ブロック・パーティー

出典:http://www.toddlovesupreme.com/music/revolutions-on-air-documentary-the-history-of-new-yorks-golden-age-in-underground-music/

スラムから全米へ

ブロック・パーティーは開催されるごとに、そこで演奏される音楽やダンスのクオリティが洗練されていき、次第に規模が大きくなってニューヨークのゲットー(黒人居住区)を飛び出します。

そうして、ラジオやテレビでも彼らの音楽は頻繁に取り上げられるようになり、一部のパイオニア的なミュージシャンが商業的に成功を収め、ビッグマネーを手にします。

この成功は、アメリカで大半が貧困層だった黒人にインパクトを持って受け入れられ、多数のフォロワーを生みました。

また、ミュージシャンたちは自分たちの文化によって富と名声を得たことに誇りを持ち、音楽活動の中で、音楽表現意外の部分でも生い立ちや成功の軌跡を誇示していきます。

つまり、ファッションにそうした部分を反映させていくのです。

Old skoolなRUN-DMCと、Gangstaなウエストコースト

みんな大好きRUN-DMCと、Old skool

ヒップホップアーティストで、初期に商業的に成功したグループはいくつかありましたが、最も早くその名を世界に知らしめたのはRUN-DMCにほかならないでしょう。

1984年にヒップホップというジャンルではじめて全米ゴールドディスク賞を受賞。こうした初期に成功したラップミュージックやアーティストを、オールドスクールと呼びます。

彼らの成功によって、ヒップホップの音楽面だけでなく、そのバックグラウンドやファッションにスポットライトが当たります。

RUN-DMCが着こなす、adidas(アディダス)のトラックスーツ(ジャージ)やスニーカー、KANGOL(カンゴール)のハットなどの組み合わせは、
オールドスクールの典型的ファッションと言われており、それまで観衆がステージ上に眺めていたどのアーティストとも違った服装は熱烈な支持を集めました。

トラックスーツは、ブロック・パーティでブレイキンに熱中するダンサーの制服のようなものでした。

他にも、Bring Bring(ブリンブリン=アクセや宝石が光を反射する様子の擬音語が転じて、派手とかイカすとかいう意味合いで使われる)なゴールドのアクセやTimber land(ティンバーランド)、
バギーパンツ(太いパンツ)が彼らの正装でした。

こうしたアイテムは、例えばバギーパンツはお金のない黒人家庭で、「身体が大きくなっても着られるように」という理由で買い与えられたもの。

これはまさしく彼らの生い立ちを象徴していますし、ゴールドのアクセは金銭的な成功を誇示しています。

自らのバックグラウンドを音楽とファッションでもって表現するヒップホップミュージシャンは、
黒人のみならず、世界中の社会に反発心を持つ若者たちや貧困層の大きな支持を得て、その勢力を広げるのでした。

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Run-DMC-1021x580

出典:http://thebackpackerz.com/pourquoi-adidas-mise-tout-rappeurs/

西海岸の雄たち

ヒップホップを語る上で欠かせないのが、東西どちらの出身か、という議論。

RUN-DMCはNY出身、つまり東海岸(East coast)の人間ですが、
西海岸(West coast)には、ICE-T(アイスティー)、2PAC(ツーパック)、ICE-CUBE(アイスキューブ)、Dr.Dre(ドクタードレー)、Snoop Dogg(スヌープドッグ)など、
今現在もシーンの最前線で活躍する重鎮から、商業的にも音楽的にも高い評価を得たアーティストが揃い踏みとなっています。

彼らが表現したラップ音楽は、貧困層の黒人音楽という点は共通していながらイーストコーストのラッパー達と少し趣向が違い、
“Gangsta rap”(ギャングスタ・ラップ)と呼ばれる、反社会的なメッセージをリリックに込めた凶暴なものでした。

彼らの日常はドラッグや売春の周旋で生計を立て、時には銃と暴力で人々をねじ伏せ、また自分の身を守るような、危険に満ちたものでした。

ギャングスタラッパーネルシャツ

出典:http://dopestreet.blog71.fc2.com/category200-55.html

みんながイメージするヒップホップファッション=ギャングスタラッパーのファッション

ギャングスタラッパーは、西海岸の温暖な気候を反映してか、鮮やかなカラーリングでゆったりしたシルエットの服装を好みました。

鮮やかなカラーリングのオーバーサイズのネルシャツは、ラッパーのイメージそのものと言えますが、
それ以前に西海岸文化の象徴であったサーフィンに欠かせないアイテムだったことにも触れておきましょう。

サーファーは海水で冷たくなった身体を暖めるのに、ビーチではフランネルのシャツを着用していました。

そして、60~70年代に活躍したサーフロックミュージックの雄であるThe Beach Boys(ビーチボーイズ)は、まさしく砂浜を歩くサーファーのスタイルでステージパフォーマンスをしていました。

音楽的な影響はあまり感じませんが、ファッション面ではウエストコーストのラッパーが影響を受けていたとしても不思議ではありません。

その他には、ウエストコーストヒップホップの拠点たるLAに根ざした、ドジャースのキャップやレイカーズのシャツを揃いで身につけて、
ホームタウンをレペゼン(象徴)しているのも特徴的です。

ちなみに、NEW ERA(ニューエラ)のキャップのラベルシールを剥がさないまま被るのは、新品を盗んできて被っていることを示し、
ダボッとした服を身につけるのは、服役中に囚人同士の喧嘩を防ぐために動きにくい服を着せられたのを表しており、悪さやムショ帰りのアピールをしていたという説があります。

 ギャングスタレイカーズ

出典:https://twitter.com/snoopdogg/status/738814636225630208

音楽としては定着するもファッションは下火に。そして、反撃の狼煙

ヒップホップファッションの過渡期

イーストコーストとウエストコースト。

2つの勢力は、進化の過程でぶつかりあうことを経ながらも、アメリカのヒップホップカルチャーを巨大化させていきます。

そんな中2000年に入る少し前、イーストとウエストのどちらでもないミズーリ州出身の、黒人ですら無いEminem(エミネム)が、その時既に大御所となっていたドクタードレーのプロデュースで登場します。

白人ながら2000年前後のラッパーで彼を凌ぐ存在はおらず、日本においても、たとえヒップホップに精通していない人ですら、
エミネムの映画”8 Mile”の挿入歌”Lose your self”のサビを適当な英語で口ずさめたりするほどです。

かつてこれほど成功したヒップホップアーティストは存在しませんでした。

しかし、ファッションの観点から言うなれば、エミネムの影響はあまり大きくなかったと言わざるを得ません。

彼のファッションに憧れるキッズはもちろん少なくありませんでしたが、
エミネムのコーデや着用アイテムはギャングスタラッパーの影響が色濃く、ナイキのマイケル・ジョーダンのシグネイチャーラインをトレードマークにしていたことや、
自身のファッションブランドを設立したこともありましたがそれほどオリジナリティはなく、ファッション面でレジェンダリーな印象は残していません。

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出典:http://www.purepeople.com/media/eminem-sur-la-scene-des-brit-awards_m541669

またこの頃のヒップホップファッションはあまり東西の垣根がなく、というよりもむしろ、オールドスクールは過去の遺物と化し、ギャングスタファッションもステレオタイプと見られ、
エミネムが活躍した2000年代前半以降、ヒップホップファッションは一頃の勢いを失いました。

そして、取って替わるように台頭したのはハイブランド系の細身のコーディネートでした。

Hedi Slimane(エディ・スリマン)が就任したDior Homme(ディオールオム)などの高級メゾンブランドや、その影響を受けたモードで洗練された装いが支持を集めます。

その間、音楽面ではヒップホップはすっかりと一ジャンルとして定着し、特にブームというような現象も起きませんが、
セールス的には、常にヒップホップアーティストが上位に名を連ねていました。

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新世代のカリスマがヒップホップファッションを次の局面へ導く

そうした中で2005年、既にプロデューサーとしてグラミー賞を受賞していたKanye West(カニエ・ウエスト)が、米タイム誌の「今日最も影響力のある100人」に選出されました。

カニエは、幼い頃からヒップホップやR&Bを志向し、8歳時には作曲していたと言われ、今現在の活躍も納得のモンスターぶりだったそうです。

これまでのヒップホップアーティストが、自信の窮乏した生活や、それに伴う命の危険を背景にクリエーションしてきたのとは異なり、
カニエは父親が新聞のカメラマン、後に両親が離婚しますが、その後母親は大学の教員となるなど、経済的には恵まれて育ちました。

そうした従来のアーティストとは異なる裕福な環境で、たっぷりと様々な音楽や芸術の恩恵を受けてクリエイティビティを育んだ、
言わば新世代のヒップホップアーティストなのです。

そんなカニエの活動は音楽のみに留まらず、2012年、自信のMVでスタイリストを努めていたVirgil Abloh(ヴァージルアブロー)とともに、
PYREX VISION(パイレックスヴィジョン)というファッションブランドを立ち上げます。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=UTCeG6WunLE

このビデオは彼らのミュージックビデオですが、
出演者が着用するアイテムは話題を呼び、パリの有力セレクトショップ、Colette(コレット)のディレクターは、「ビデオの中の服は買えるの?」と二人に問い合わせたほど。

二人はこの反響に応じる形で、ビデオのタイトルを冠したパイレックスヴィジョンを発表、後の2014年に、パイレックスのデザインを踏襲したOFF-WHITE(オフホワイト)をデビューさせるのです。

オフホワイトは、現代の情報伝達の速さもあいまって、瞬く間に世界中のストリートを席巻します。

ブームとなったブランドのデザインをより廉価なメーカーが模倣し、ファッションにそれほどお金をかけない層が飛びつき、感度の高い層が離れ、やがて誰も着なくなる。というのが流行というものですが、
デビューから2年余りのオフホワイトは、模倣ブランドすら既に隅々まで行き渡っている感が漂っています。

しかし、情報伝達の速度が高まった分、後発の類似ブランドも数え切れないほど生まれ、数の多さはつまり、選択肢の多さでもあるためにただのパクリに留まらず、結果的に進化を促したといえるでしょう。

同じラグスト系のブランドでも、着る人のライフスタイルなどに合わせて選べるように細分化しています。

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ミックスとかサンプリングとか

「自分の周りには常に、ハイブランドとストリートウェアの組み合わせみたいなゴチャゴチャのコーデを楽しむヤツらがいた」

カニエは、オフホワイトの立ち上げに関するインタビューなどで、
「自分の周りには常に、ハイブランドとストリートウェアの組み合わせみたいなゴチャゴチャのコーデを楽しむヤツらがいた」と語っていますが、
中流以上の家庭に育ったことも影響したのではないでしょうか。

音楽的には、言うなれば「ガラの悪い連中」が好むものを志向しながらも、出自の上品さは立ち振舞や服装に現れる部分だと思います。

だから、変に悪ぶったファッションに傾倒するのではなく、気に入った部分は取り入れながらも、自分の根本まで変えるようなことはしない。

そうして生まれたのが、ゴチャゴチャなハイブランドとストリートウェアの組み合わせ、つまり『ラグジュアリーストリート』だったというわけです。

 

混同が適度なミックス感を産んだ??

現在のヒップホップファッションブームは、何もラグストという新ジャンルがこれまでのヒップホップファッションを駆逐したわけではありません。

新たな潮流が生まれる一方、純然たるヒップホップファッションも見直されているのが、ブームたる所以。

日本における第一次ヒップホップブーム(’90年代後半~’00年代初頭)の頃に凄まじい勢いで流行していたブランドなども、
今非常に元気があります。

Supreme(シュプリーム)は、シーズンの立ち上げの度渋谷に行列を作り、
A BATHING APE(ア ベイシング エイプ)の一部のアイテムは、再びネットオークションを活性化させています。
Stussy(ステューシー)も、日本では大手セレクトショップで別注をリリースしたりしています。

シュプリームやステューシーといったブランドはヒップホップカルチャーから出てきたわけではありませんが、
よくヒップホップファッションに欠かせないアイテムだと思われがちですし、実際にそういう認識で着用している人もたくさんいます。
エイプはスチャダラパーが愛用していたり、Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)がブランドイメージを覆すようなスマートな着こなしを実践していたりします。

ではそれらのアイテムのルーツはどこにあるのかというと、スケート(とスケートの起源となったサーフ)カルチャーにほかなりません。

元々ステューシーはサーフショップのオリジナルTシャツを作ったことがブランドの起源ですし、
シュプリームにしても、デザイナーのJames Jebbia(ジェームズ・ジョビア)が、
自身の経営していたスケートショップに出入りしていたステューシーのデザイナー、Shawn Stussy(ショーン・ステューシー)と一緒に立ち上げたブランドです。

エイプにしても、直接スケートやサーフにまつわるルーツはありませんが、A BATHING APEのブランド名を考案したのは、
90年代の裏原ブーム全盛期に影響力を持ち、現在はドメスティックブランドのC.E(シーイー)のデザイナーとして活躍する、スケシン(SKATE THING)です。

スケシンというニックネームは、藤原ヒロシが当時交流の深かった、NEIGHBOR HOOD(ネイバーフッド)の滝沢伸介と区別するため、
『スケートボードの得意なシンちゃん』略してスケシン、と呼んだことに由来しているそうです。

所謂ヒップホップカルチャーとは関係のないところから発生していますが、前に触れたウェストコーストヒップホップのファッションに、
西海岸特有のサーフカルチャーの影響が見られることを鑑みると、実は共通する部分もあり、ヒップホップファッションとスケートファッションは親和性の高くて当然かもしれません。

こちらの画像はSuicidal Tendencies(スイサイダル・テンデンシーズ)という、スケートパンクを代表するバンドですが、精通していない人の目から見れば、完全にヒップホップグループでしょう。

 Suicidal

出典:http://rateyourmusic.com/artist/suicidal_tendencies

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サンプリングという手法

ヒップホップは、ファンクやソウルといった黒人音楽をサンプリングしているという話を序盤でも述べましたが、
ここにもスケートファッションとヒップホップファッションの親和性の高さを証明する事実があります。

それは、スケートファッションブランドの代表格(もはやそんなレベルはとうに超えていますが……)であるシュプリームは、極端に言ってしまえば『サンプリングブランド』ということです。

シュプリームのあの有名なBOXロゴが、アメリカのデザイナーである、Barbara Kruger(バーバラ・クルーガー)の作品を基にしているのはあまりにも有名な話ですが、
リリースするほとんどのアイテムが、
かつてアメリカの大手スーパーマーケットで流通していた何の変哲もないスウェットシャツや、人気コミックのキャラクターが着用している服から着想を得ている点も見逃せません。

シュプコピー

出典:http://dandydiary.de/supreme-alle-referenzen-und-inspirationsquellen/

これには様々な意見があって、良し悪しをここで議論する気はありませんが、所謂「単純なパクリ」の一言では片付けられないデザインです。

音楽にしても絵画にしても、新しい表現方法や技術は既に出尽くしたと、30年も40年も前から言われており、何かの影響は避けられないと言えるからです。

また、すべての作品をサンプリングにするという試み自体もデザインといえるかもしれませんし、その考え方自体がオリジナルだったりします。

さらに言えば、デザインのソースが一貫していて、どのソースもシュプリームらしいチョイスというところに収まっており、
『シュプリームらしい』ということは、ブランドイメージを確立していると言えなくもないのです。

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おわりに

憧れの移り変わりから見えてくる、今ヒップホップが人気を得ている理由。

このような、サンプリングというすでにあるものの形を変えて表現する方法は、昨今のマーケットを探る上で大きなヒントとなるかもしれません。

初期のヒップホップブームだった頃には、RUN-DMCや2PACなど、アーティスト自身=プレイヤーが脚光を浴びましたが、
今現在シーンを牽引し、ファッションアイコンとして注目されているのは、カニエ・ウェストやファレル・ウィリアムスといった、『プロデュース』を原点に成り上がった人物達です。

彼らは、アーティストに楽曲を提供し、支持を得るための演出を作り出します。

そうしたクリエイティビティをもつ人間が支持を得るというのは、
要は、『まとめる力』を持つことの重要性に、マーケットが気がついているのかもしれません。

「デザインや曲は出切った。情報は有り余っている、定義は決め尽くした」。
こんな状況で、選び方が非常に難しくなっている今、その選択肢をスマートにまとめることができることが、オリジナリティとして捉えられているのでは。

それなら、サンプリングという作業を繰り返してきた、『ヒップホップ』というジャンルの一番得意とするところ。

何故ヒップホップが再ブレイクしたのか。
それは、先に述べたようなニーズにマッチしたから。という一つの答えが見えてくるのではないでしょうか。

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