新生「PRADA」が始動!ラフ・シモンズが加入したPRADAを振り返る
ハイブランドの一角として牽引し続ける「ミウッチャ・プラダ」率いるPRADAですが、2020年に変革期を迎えます。それは、ファッション業界の第一線を走り続けるデザイナー「ラフ・シモンズ」が、ミウッチャ・プラダとの共同クリエイティブ・ディレクターとしてPRADAに加入したことです。 ラフ・シモンズ加入の発表はファッション業界に激震をもたらし、これまで以上にPRADAが注目されています。
そこでこの記事では、新生「PRADA」をディレクションする「ミウッチャ・プラダ」と「ラフ・シモンズ」2人の輝かしい功績を振り返るとともに、PRADAにラフ・シモンズが加入したことで変化したことについてお話していきます。
2人のクリエイティブ・ディレクターの功績
約100年以上もの歴史があるラグジュアリーブランド「PRADA」ですが、その道筋は決して順風満帆だった訳ではありません。そんな過去を乗り越え、ブランドは画期的なアイテムを発表し存続。現在のファッションシーンにおけるPRADAの絶対的な地位の確立に一役買った2人のクリエイティブ・ディレクターをご紹介します。
PRADA再建の立役者「ミウッチャ・プラダ」
出典 fashionweekdaily.com
1949年、ミラノ出身。彼女の祖父はPRADA創業者である「マリオ・プラダ」です。そんな家系で生まれながらも彼女自身はあまりファッションに興味はなく、国立ミラノ大学で政治学を専攻していました。
大学卒業後はパントマイマーなどの職を経て、PRADAへオーナー兼デザイナーとして1978年に入社。以前は彼女の母「ルイーザ・プラダ」が経営を引き継いでいましたが、世界大戦や動物愛護運動の影響もあり経営不振に追い込まれていました。ミウッチャ・プラダは母から経営について学んでいましたが、それでもPRADAには低迷期が続きます。
そんな中、彼女は躍進のきっかけとなる「ポコノ」を1985年に発表しました。今でもブランドアイコンとして愛されるこのシリーズ。当時はハイブランドのバッグといえばレザーが主流でした。 ですがポコノに使われる生地はテントやパラシュートなどに使用されるナイロンをベースとしたPRADAオリジナルの素材。彼女の斬新なアイデアは「タフなのに軽い」と世間からの注目を集め、会社の飛躍に貢献します。
この成功のきっかけの陰には彼女のパートナーである「パトリツィオ・ベルテッリ」の存在があります。彼は優秀なビジネスマンで革小物の製造メーカーを2社経営していました。そこで作られていたのはなんとPRADAのコピー商品。本物そっくりに作り上げるコピー商品は本物を熟知していなければいけません。それ故に彼は当時低迷していたPRADAに足りなかったものを知っていました。「PRADAは新しい一歩を踏み出さなければならない」とミウッチャ・プラダに助言をしていて、それがきっかけとなり、文字通り新しい素材を採用したポコノシリーズが登場したのです。
ビジネスパートナーとなった2人は1987年に結婚。1988年にはまたもパトリツィオ・ベルテッリの助言によりレディースウェアの展開がスタート。1989年FWにはミラノコレクションにて初デビューをしています。
1993年、セカンドラインとして「MIU MIU」を立ち上げます。彼女の幼少期のニックネームを冠したこのブランドはラグジュアリーで大人っぽいイメージのPRADAとは違い、ガーリーで甘めな印象。それが若い女性の間で受け、話題となりました。ミウッチャ・プラダ自身の私服をテーマにデザインされており、価格帯に関してもPRADAよりかは比較的手に入れやすく、より広い年齢層をターゲットにしています。
その同年、ミウッチャ・プラダとパトリツィオ・ベルテッリは共にPRADA財団を設立。翌年1994年にメンズラインもスタートさせ、現在のような総合服飾系ブランドへと事業を拡大させました。
2000年代には、数々の功績が認められTIMEマガジンの「世界で影響力のある人物100人」やVOUGEマガジンの「ファッションの未来を切り開く7人」に選出されています。
2022年に2人はCEOを退任すると発表がされましたが、ミウッチャ・プラダは引き続きPRADAとMIU MIUのクリエイティブ・ディレクターを務めています。
ファッション界の異端児「ラフ・シモンズ」
出典 theguardian.com
1968年、ラフ・シモンズはベルギーで生まれます。大学で工業、家具デザインを学び卒業後はインテリアデザイナーに。ですが1990年に行われた「MARTIN MARGIELA」のショーに深く感銘を受け、ファッションデザイナーへの転身を決意します。
「マルタン・マルジェラ 」の出身校であるアントワープ王立美術アカデミーへの入学を希望していましたが、ファッション学科のディレクターであるリンダ・ロッパから「あなたはこの学校で学ぶ必要がない」と言われたため、彼の服作りは独学で行われます。
1995年に自身のブランド「RAF SIMONS」を立ち上げ。同年にはミラノの展示会でコレクションも発表します。服飾学校へ通う必要すらない豊富な芸術性に加え、独創的なセンスは多くのファンを獲得しました。目を惹くレイヤードファッションや写真を大胆にプリントしたデザインは多くのブランドに影響を与えます。
彼のデザイナーとしてのセンスが評価され、2005年に「JIL SANDER」のクリエイティブ・ディレクターに就任します。元々JIL SANDERはレディースのみでしたが、彼はメンズコレクションのデザインも手がけ、結果として現在でもメンズラインは残っています。2011年にはカジュアルラインの「JIL SANDER NAVY」を展開し、より幅広い層にブランドを認知させることに成功しました。
2012年、「DIOR」のアーティスティック・ディレクターに就任し、レディースとアクセサリーのデザインを担当します。彼の初コレクションは2012FWに発表され、1950年代にスポット当てたデザインは好評でした。世界的に大流行した、DIORの代表的なHラインをデザイン。彼がブランドの歴史やクラフトマンシップを重んじてるのがよく分かります。
3年間務めたDIORの後は「CALVIN KLEIN」にてチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任。ブランドの主力であるアンダーウェア、ジーンズ、ウェアを一つのビジョンの元に統一し、同じ方向性でクリエーションしていきます。
出身地や今までデザイナーとして関わったブランドはヨーロッパのものばかりですが、そんな彼だからこそ「外部の視点からニューヨークを代表するブランドを客観的に捉え、再生・再建できる」といった期待が寄せられました。そしてラフ・シモンズが携わった初コレクションは2017年にニューヨークにて発表されます。
2020年からPRADAの共同クリエイティブ・デザイナーに就任。ミウッチャ・プラダとタッグを組みます。サブカルチャーや音楽、またメッセージ性の強い彼のクリエイティブ力はPRADAの世界観に新鮮なエッセンスとなっています。2021年SSのミラノコレクションでは大きな話題を集めました。
そんな彼ですが自身のブランド「RAF SIMONS」の終了を発表。2023年SSロンドンコレクションにて27年にも及ぶブランドの歴史に幕を閉じました。
「PRADA」の変革期
2020年はPRADAにとっての変革期と言っても過言ではないでしょう。 ラフ・シモンズのクリエイティブ・ディレクター就任はファッション業界で大きな話題を呼びました。
出典 dezeen.com
ラフ・シモンズがPRADAに加入
ミウッチャ・プラダとの共同クリエイティブ・ディレクターという形でラフ・シモンズが加わります。以前からSNS上で噂が広がっていましたが、実際のところ確証はありませんでした。
ただ、当時PRADAグループの傘下だったJIL SANDERにラフ・シモンズが在籍していた過去があるため一概にフェイクだとも言い切れなかった風潮。しかし実際にはこの頃からCEOであるミウッチャ・プラダ、パトリッツォ・ベルテッリと親交を深めており、2018年CALVIN KLEINを退任直後にアプローチを受けていました。
ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズはお互いのブランドのファンだったとVOUGEのインタビューで答えていて、インスピレーションが共通する部分もあったようです。彼女がショーの準備をしてる際、ラフ・シモンズとも親交を持つスタイリストにある提案をしたところ「残念だけどそれはできないよ、なぜならラフがすでにやってしまったから」と返事が。
このように2人の根底にあるクリエイティブ面が類似しているからこそ、歴史あるPRADAの軸はズレずに新生PRADAとして新たなファン層を獲得しているのだと思います。
PRADA愛を感じるコレクション
ラフ・シモンズが共同クリエイティブ・ディレクターとなり期待されているのが、彼ならではのサブカルチャーや音楽をデザインとして落とし込んだコレクション。今までにない視点からPRADAを再構築します。
発表されてから瞬く間に話題となったのが「チーズアイニット」。水玉模様に穴が開いたタートルニットは世界中のジャーナリストから注目を集めました。同様に水玉模様がプリントされたアイテムも発表されており、シックで大人っぽいPRADAのイメージにポップな新鮮さを溶け込ませています。
RAF SIMONSでもタッグを組んでいるアーティスト「ピーター・デ・ポッター」のアートワークがデザインされたウェアは、ラフ・シモンズらしさが全開に現れていてファンにはたまらないアイテムになっています。何処となくアートを感じさせるデザインはPRADAのテイストと上手く融合されています。
彼のPRADA愛はこれだけではありません。 ブランドアイコンであるトライアングルロゴを用いたデザインは秀逸の一言。特に目を惹いたのは洋服の首元に大胆にあしらわれたロゴです。これは外部から引き抜かれたデザイナーならではのアプローチによるもので、従来のPRADAでは予想もできなかったこと。またウェアにデザインするだけではなく、トライアングルロゴ自体がバッグになっているユニークなアイテムもあり、PRADAのジグニチャーは彼によって様々な形へと進化を遂げています。
そして世界的パンデミックが起こった影響もあり、サスティナブルやロックダウン期間中に見直されたテクノロジーの変化にも注目。環境に配慮したリサイクルナイロンの採用や、最新の技術を駆使し360度どこからでもルックを見れることを可能にしたりと、ファッションの枠を超えて、新しいPRADAの形を発信しています。
新生「PRADA」コレクションについて
PRADAにラフ・シモンズが加入してから初となるコレクションは2021年からスタートしました。新鮮でクリエイティブなショーは初年度から多くの人の関心を集めます。
出典 prada.com
2021年SSコレクション
2020年9月にミラノで発表されたレディースのコレクション。同年の2月にミウッチャ・プラダとラフ・シモンズが共同のクリエイティブ・ディレクターを務めるとアナウンスされ、ファッション業界に歓喜をもたらしました。
テーマは「ユニフォームやテクノロジーと人類の関係性」。テクノロジー・リアリティ・サスティナビリティの3つのキーワードを軸にコレクションは展開していきます。
テーマにあるユニフォームは文字通りの制服という訳でなく、「普段着」といった意味合いを指します。シーズンに特化したアイテムというよりも丁寧に作られ長く着ることのできる、リアリティある普段着のようなアイテムをコレクションで表現することで、近年問題となっている大量廃棄の現実を世間に訴えかけています。ラフ・シモンズらしさのあるアートワークはもちろん、袖を捲り上げたスタイリングはPRADAの新しいスタイルに。
2021年FWコレクション
初のメンズコレクションとなった今回のテーマは「POSSIBLE FEELINGS」。「交流や関係を持つといった衝動をベースに、人間の身体と自由を表現した」と説明する2人。
今シーズン注目されているジャガードニットのボディスーツはまさにテーマを文字通り具現化したものとなっています。ボディラインに沿ったデザインはセカンドスキンのようにシャープで洗練されたシルエットに。インパクトのあるジャガード柄は前回披露されたPRADAの捲し上げスタイルから露出させたり、パンツの裾からチラ見せさせたりと好バランスにコーディネートされています。
ランウェイを歩くモデルたちのヘアースタイルは60年代を彷彿とされるモッズルック。PRADAのトライアングルロゴが袖のポーチに施されたボンバージャケットも発表されており、ラフ・シモンズのエッセンスが随所に見られます。彼の十八番アイテムでもあるスーパービッグサイズのニットも登場しました。
2022年SSコレクション
ミラノにあるプラダ財団とサルデーニャの風景で撮影。オンライン上で発表したメンズコレクションです。テーマは「TUNNEL TO JOY」。モデルたちが赤い壁に囲まれたトンネルを抜けると、そこには開放感あふれる海が。閉鎖感からの解放や自由を表現したこのコレクションはアイテムにもしっかりと投影されています。
中でもポイントなのが丈の短いショートパンツやオールインワン。SSならではのマリンテイストなデザインやロールアップはビーチスタイルかつ遊び心があります。トップスやジャケットに関してはややゆったりとした仕立てで、パンツとは対照的に身体を包み込むようなシルエットに。リラックス感がありながらもモードな雰囲気は新生PRADAと呼ぶに相応しいでしょう。
2022年FWコレクション
「BODY OF WORK」を題材としたこのメンズコレクションは労働にフォーカス。 ランウェイにはカイル・マクラクランやジェフ・ゴールドブラムといったハリウッドスターがモデルとして登場しました。
労働を象徴する実用的なユニフォームとエレガントで洗練された表現を合わせたデザインが印象的。普遍的なワークウェアや作業着として定番なオールインワンもパステルなカラーで彩られていたり、上質なレザーを使ってラグジュアリーな雰囲気へとシフトしています。
素材だけでなく伝統的な仕立て技術を使うサルトリアルという構造を採用していて、ドレスジャケットのような威厳と風格にあふれた佇まいに作り上げられています。
ジャケットやコートの肩は極端に大きくなっていて、強調されたシルエットも今回の特徴です。その一方でウエストは細く仕立てたり、ベルトのギミックを加えることでフォルムに緩急が生まれ印象的なシルエットに。
2023年SSコレクション
「TOUCH OF CRUDE」がテーマのレディースコレクション。相反した要素を組み合わせることで「生々しさと官能」「繊細さと粗雑さ」といった対照的で矛盾を含んだ「現実」を投影しています。
目立ったデザインとしては「ねじれ」「裂け目」。立体的に生地を仕立て上げることで生まれるねじれやカットによって施された裂け目は歩くたびに、あたかも偶発的に出来上がったもののように浮かび上がります。これを今回のテーマである矛盾として表現しているのです。
その他に対照的な要素として「昼と夜」もあり、ネグリジェのような素材をあえて屋外で着るコートとして仕立てています。PRADAの持つミニマルさをディティールや素材使いのみで、新たな視点として反映しています。
2023年FWコレクション
テーマは「LET’S TALK ABOUT CLOTHES」。ファッションの本質にフォーカスを当てた今回のメンズコレクション。ショート丈のモッズコートやダッフルコートが登場したりと、ラフ・シモンズのクリエイティブ力が存分に表現されています。
彼のアイコンでもあるボンバージャケットは襟やファスナーが削ぎ落とされたシンプルなデザインに。ですがサイズ感はビッグシルエットかつやや丸みをもたせ、従来とはまた違った印象に仕上がっています。
今回のコレクションで話題を集めたのがシャツの衿のみを取り合わせたニットカーディガン。テーラードジャケットを羽織るとベーシックなスーツスタイルに見えますが、実際には断片的な衿のピースのみ。無駄を極限まで削ぎ落としても、スタイルとしてしっかりと表現されているその奇抜なデザインは、とても斬新なアプローチと言えます。
2024年SSコレクション
無機質なスライムが会場の天井から流れ落ちる「FLUID FORM」がテーマのメンズコレクション。流動性をキーワードにシャツをPRADA視点で様々な形へと変化させています。
オーバーサイズで光沢のあるポプリン生地のシャツはテーラードジャケットライクに。セットアップで合わせたショーツをタックインし、シャープなXラインで着こなしています。ロングコートはシャツの襟とボタンをあしらい、ライトなカラーにすることでSSコレクションらしい軽快な印象に。
流動的なのはシャツのテーラリングだけでなく、小物にも随所にあらわれています。サングラスのフレームやこのショーの招待状にも同封されていたカチューシャのフレームはウェーブがかっており、アクセントとしてスタイリングに組み込まれています。
モードスケープではPRADAのアイテムのお買取りを強化しております。
最後までお読みいただきありがとうございました。2人のクリエイティブ・ディレクターによってPRADAは今もなお進化し続けていると、彼らのコレクションから伺えます。これまでにPRADAが築いてきたエレガントな世界観は、ラフ・シモンズの近未来的な先進性が融合したことで、より最先端なものになりました。 ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズが作り出す新生PRADAに今後も注目です。
また、モードスケープでは、PRADAのアイテムのお買取りを強化しております。 買い換えのタイミングやサイズの変化によって合わなくなることなどもあるかと思います。そんな時に、モードスケープにご相談していただければ全力でお力になります。 古いモデルやクリーニングやお直しが必要なものでも可能な限り良いお値段をおつけできるように吟味しながらお買取りしております。汚れやダメージがあるものでも、リペアを施して販売することも可能ですので一度ご相談ください。とりあえず値段だけ聞いて検討したいという場合は、LINE査定などで査定額を見積もることも可能です。お気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
MODESCAPE
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