ファッションにおける文化人類学者、visvimデザイナー「中村ヒロキ」
ファッションデザイナーは、どんな人もある種の研究者的な一面を持っているものだと思う。
自分のクリエーションを洋服で表現するため、ファッションの歴史や文化を紐解き、時にサンプリングし、時に従来とは全く逆の過程を辿るなどする。
それらの行為はまさに研究、勉強に近いものである思う。
その意味で、デザイナーにはクリエイティブが必須な一方、勉強熱心さも求められるものだと言って間違いない。
服を作る度に、小論文を書くデザイナー
十代の頃から旅を続ける、ビズビムのデザイナー、中村ヒロキ。
デザイナーとして評価を確立した現在でもそのフットワークは変わらず、空っぽのトランクを車に積んで、世界中を回る。
アメリカ大陸先住民の居住区や北欧の集落で見つけた衣服や織物をトランクいっぱいに詰めて東京に帰り、現地で見聞きした染色技術や伝統的な技法に関する見解を論文にまとめて発表。続けて、帰ってきた現代の景観の中で、自分の中に取り込んだ旅先の技術や伝統をどのように発揮できるか考える。
衣服の歴史や文化について論文にまとめるとは、まさに研究。衣服を通して民族の歴史や叡智を紐解くその有り様は、ファッションの文化人類学者といえるかもしれない。
彼の研究から生まれるアイテムは、他のどのブランドにも作り得ない、見たことのない衣服や靴だ。
世界中の伝統的技術と現代の景観が融合したアイテム。
ビズビムは見たこともないアイテムを作るにもかかわらず、それを定番化させてしまうからすごい。
ブランドスタート当初から発売している「FBTモカシン」というシューズは、まさしくブランドのそんな凄みを体現している。
出典:https://shop.visvim.tv/jp/jp/f3/?PID=0116401001002&PNM=FBT
モカシンは元々、ネイティブアメリカンが履いていた一枚皮のスリッポン式の靴。
先住民の知恵が詰まった靴で、足首周りのフリンジは地面を擦って歩いてきた道に足跡を残し、寒さが厳しいときにはフラップを上げて防寒性を高められる。
それらの知恵を装飾として残しながら、現代の都市環境に適したゴムソールを融合させた。
シーズンによってデザインやスペックが異なるが、中にはビブラムソールを採用しているモデルもある。
こんな靴を生み出せるのは、世界に中村ヒロキだけだろう。
数々のスターが愛するビズビム
類を見ないアイテムをリリースするビズビムは、数多くの有名人のファンを抱える。
代表的なところでは、エリック・クラプトン。
出典:http://www.complex.com/sneakers/visvim-fbt-history
中村ヒロキと親交の深い藤原ヒロシの紹介でビズビムを知って以降、大ファンになったんだとか。
画像で持っているショッピングバッグは全てビズビムのもの。
また、カニエ・ウエストもビズビム愛用者として有名だ。
出典:https://www.tumblr.com/search/kanye%20west%20visvim
フリンジ付きのFBTモカシンを着用している。
日本人では、日本で最も影響力を持っていたこともあるファッショニスタである木村拓哉も、ドラマなどでビズビムを着用していた。
衣服の可能性を開拓していく
中村ヒロキには、天然染料に並々ならぬコダワリがある。
北海道のアイヌ民族の藍色の染色方法や、奄美大島の着物の泥染めなどを自らのコレクションピースに応用する。
古来からの方法を人の手で行うとなると、かかる手間やコストが尋常じゃないが、彼は近代的な機械が作る平板な色や形では満足できないのだという。
本来なら機械と多くの人手をかけて行なう染色を、泥の中に住んでいるバクテリアにまかせることで、人や機械に出せない独特の色のアイテムを創り出す。
そんな他のデザイナーには真似できない工程が、見たことのないプロダクトを生む。
ブランドスタートからそろそろ20年になるが、ビズビムが今後生み出すアイテムからも目が離せない。
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MODESCAPE
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